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山紫水明の里

 ぬり絵の旅も残りわずかとなってきた。今回訪ねた和歌山県を入れて残り8県。その和歌山県は南紀と呼ばれる地域に行ってきた。不勉強をさらすことになるが、わたしは元の紀伊国はすべてが現在の和歌山県に属しているとばかり思っていた。三重県の南部は元紀伊国だったんだね。具体的に言うと、尾鷲、熊野あたりは元紀伊国で現三重県。

 ま、そんなこたぁどーでも良いことだよね。。。先に進めよう。今回、わたしたちが訪ねた南紀とは、瀞峡(どろきょう)、那智の滝、そして潮岬の3カ所のみ!『そんだけかい!』って声が聞こえてきそうだが、そんだけなんだな、これが。わたしたちの住む静岡県の西部地方から南紀へは意外に遠い。名古屋からの和歌山県の入口である新宮まで特急(これがディーゼル気動車の特急なんだな)を使っても3時間かかってしまう。遠っ。遠いッス。そこへ1泊2日行くことの無謀を悟ったのは出かけてからのこと。それで、点と線みたいな旅行になってしまったのだ。

 紀伊半島ってイメージから列車は海岸線を走るのかと思えば、松阪までは田園風景だし、そこからは山の中ばかりで、熊野の手前からやっと海岸線を走るようになった。地図を見ると、志摩半島の付け根を突っ切ってるんだね。だから、山ばかり。

 新宮駅に降りたつ。で、ワケあって駅頭からタクシーでトヨタレンタリースへ直行。行ってみてビックリ。レンタカー屋だと思って行った指定された場所は、名豊トヨタ新宮営業所だった。ま、ともかくも前々から気になっていたプリウスを借りた。このクルマはハイブリッドカーと呼ばれる知ってるヒトは知ってるクルマなんだが、これについては後述する予定である。

 瀞峡へは船で遊覧しようってコトになっていた。峡谷から1時間ほど手前の乗船所(志古)でウォータージェット船という遊覧船に乗る。ここまで新宮から40分ほどだ。ウォータージェット船というのは写真のような船で、船尾にあるエンジンで一旦、水を取り込んで、それを一気に吹き出して推進しようって船らしい。昔は扇風機のお化けみたいなプロペラを船に積んで往来していたらしいんだが、これがめちゃめちゃうるさいことと、スピードアップのために現在の形になったとの由。以前は、地元のヒトのあしでもあったようだが、今は完璧に観光用だ。

 さて、ジェット船だが、静かになったとはいえ、結構音がする。エンジンの推進音とは別に、波を蹴立てるシャーっていう音が絶えず聞こえてくる。最高時速は40km/hというから、川を行き来する乗り物としては異例の速さと思われる。で、不思議なのは船の挙動で、(船やクルマって)ふつうカーブする時って遠心力で外側に傾くと思うんだが、こいつはまるでバイクのようにコーナリングのインサイドに傾くんですわ。で、これが結構小気味良いんだな。広いところでは300m以上の川幅はあると思う。みどりの山々、青い空に窓から流れ込む心地よい風。両岸の景色を眺めながら船の挙動に身体を預けていると、とてもゆったりとした気分になっていく。途中、瀞大橋の下の河原で乗客を乗せていくうちに次第に川は狭くなり、流路は右に左にと急カーブを描くようになってくる。50分ほど遡ると、いよいよ瀞峡だ。やにわに船の屋根がスライドして開いていく、福岡ドームのように(笑)。(船の写真は屋根の開いている状態)両側に切り立つ岩肌がに照らされて綺麗だ。川幅一杯に水が流れるが、狭いところでは数十mってところだろうか。水深は一番深い淵で40mほどって言っていたと思う。ほどなく田戸の船着場に着く。ここでしばしの休憩。河原から少し上の木々の間に瀞ホテルが見えている。切り立った崖とみどりの木々と青く澄んだ水以外には何もない。川の流れもきれいだ。今度は、このホテルという名の旅館に泊まってみたいと思う。船はさらに上流へと進み、松茸岩と名付けられた岩の前で向きを変えた。あとは志戸の船着き場までもどるだけだ。

 さて、クルマに戻ったわたしたちは、和歌山県でありながら周囲を三重県と奈良県に囲まれているという北山村に向かった。国であれば、エクスクラーフェンとでもいうんだろが、県の場合はこの飛び地、なんというのか。先ほど船で辿った北山川の右岸を上流に向かって進むが、これがまた狭く曲がりくねった峠道でなかなか時間かかる。川の道は明るく開けた感じであったが、クルマの道はうっそうとした樹林帯を走ってちょっと陰鬱である。瀞峡へはどこから降りるんだどうかって道を(道はかなり高ところを走っていた。)延々と走って北山村に着いた。ニョーボは、ここの観光センターで発行してくれる飛び地証明ってのが欲しかったようだが、着いた時間が遅すぎたために貰えなかった。さらにニョーボ曰く、『もっとひなびたところかと思った。。。ダマされたって感じ。』


 さて、今宵のお宿は川湯温泉。ここは旅館5軒、ペンション1軒に民宿少々の温泉場で、そこの山水館に泊まった。山水館はこじんまりとしたいい感じの旅館だ。すべての部屋から大塔川の流れが見える。これが水の澄んだ美しい川で8Fの部屋の窓から川底の石が見えた。今回の旅行で接した川はは全般に美しく澄んでいて、未だこんな川があったのか、と思うほどの透明度だった。もちろん、うんと山の中に入れば我が家の近所にも清流はあるが、川幅が100m以上もある水量豊かな川で、これほど澄んだ川は、近頃わが近所ではお目にかかれなくなってしまった。川が綺麗なことに今回はいちばん感激した。

 旅館は心地の良いものだった。ロビーは落ち着いていてよかったし、到着したときに抹茶を振る舞っていただくなんてこともついぞ経験したことがなかった。夕食を部屋でいだけるのもよかった。やはり、旅館は部屋で夕食をいただけなくてはイケナイね。お作りが今ひとつ(これはわれらが特殊な境遇にあるので致し方有るまいが。。)であったが、それ以外は充分に堪能させていただいた。


 翌朝は鳥のさえずりで目が覚めた。ツバメ、セキレイなどが川縁で遊んでいた。雨が降っていたが、緑はいよいよ濃く、雨はあまり気にならなかった。この日は、那智の滝と潮岬に行く予定だった。取りあえず、那智の滝に。ここは昔からの観光スポットである。行ってみて驚いたことに滝は神社のご神体のようであった。看板には熊野那智大社別院飛瀧神社とあった。参拝料を払って滝の近くまで行ってみた。
 時間が押してきた。帰りの電車の時間が迫ってきたのである。潮岬を見て帰ってくるのは難しい時間となってきた。行けるところまで行って帰ってくることにしてクルマを岬に向ける。ところが、ホントに微妙な時間で、潮岬に着くことは着いたがホンの少しも見ているヒマがない。駐車場の看板を背に写真を撮るのが精一杯。広々して気持ちの良さそうなところだったが、目の前で繰上げスタートを見せられた駅伝走者の気分だ。ともかく、新宮に戻る。時間との勝負。一時は諦めたが、列車の出発10分前に営業所に飛び込んだ。自分たちが今まで借りていたクルマで駅まで送って貰う珍道中の末に新宮駅に滑り込んだ。まさに綱渡りの旅であった。あとは寝ていれば南紀6号がわれわれを名古屋まで運んでくれる。いや、ホントに寝てたんだけどね。名古屋駅新幹線ホームには何故か、鹿島アントラーズのビスマルクやセレーゾ監督なんかがいた。


 さて、プリウスの話である。このクルマはハイブリッドカーと呼ばれ、環境に優しいことを売りとしているクルマなのである。簡単に言うと電動モーターと内燃機関(プリウスはガソリンエンジン)を組み合わせたシステムのことである。排気ガスの一番汚れやすい加速時にはモーターを使い、それほどでもない巡航時には内燃機関を使って走ろうってことなのだ。モーターを回す電気はガソリンエンジンを回すことで発電し蓄電池に貯める。私たちの乗ったのは1999年式のものであった。
 で、実際に乗ってみての感想だが、モーターだけで走る時が事前に考えていたよりも少ないことだ。ごくやんわりとアクセルを踏んだ状態でも時速10kmほどでガソリンエンジンとの共用になってしまう。少し強く踏めば、モーターだけで走る時間はほとんどない。最初は分からなかったガソリンエンジンの始動も慣れると分かるようになる。信号などで止まるとガソリンエンジンもストップしてしまうので車内はとても静か。なんか別世界。で、ゆっくりアクセルを踏んで再スタートすると、電車の発進時のような音がして、ややあってガソリンエンジンの加速音がしてくる感じだ。また、減速時にも電車の減速音のような音がする。これは、ブレーキに電車と同じ回生ブレーキを使っているセイだと思うが、このブレーキの効き方が、停止直前になって急に効きがよくなるために、いわゆるカックンブレーキになってしまい同乗車の不興をかうことになる。燃費は、1Lあたり24kmほどだった。
 そもそもこのクルマはハイブリッドシステム以外のクルマの基本的な部分の出来がとても良い。低速時のステアリングのアシストが大きすぎて、ハンドルが軽すぎることを除けば、ハンドリングも動力性能もファミリーカーとしての不足は全くないと言っていい。車内の広さもクルマの大きさを考えれば充分なものだ。スタイルも今風のトヨタデザインの嚆矢であっただけに新しい。ただ、いただけないのはトランクが狭いこと。これはたぶん畜電池が場所をとってしまっているためなんだろう。聞くところによると、マイナーチェンジ後の新しいプリウスは、カックンブレーキが解消され、蓄電池が大幅に小さくなってトランクが広くなったとのこと。また、モーターだけで走る時間を長めに設定し、さらに、衝突安全性もずいぶん向上したそうである。ますます良いクルマに仕上がっているに違いあるまい。ニョーボはプリウスをイタク気に入ったらしく、『次のクルマはプリウスにするかな』などと行っているほどだ。