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森とサーメとオーロラと



1995年12月30日 *ヘルシンキ経由でロヴァニエミへ。

 関西空港は広くてきれいだ。乗り換えもスッキリとわかりやすい。ただ、搭乗スポットまでのモノレールが少しうざったいな。今回のツアー同道はこの時点では8人。悠々自適のK夫妻、若い女性のお二人さん、新婚かな?と思わせる2人連れ(AさんにYさん)に、私たち夫婦。機体にサンタのペイントがされたMD11がわたしたちをフィンランドへと運んでくれる。定刻より20分ほど遅れて出発。機中は日本人だらけ。機内食は日本食も多い。

 ヘルシンキ時間午後3時半過ぎヴァンター国際空港に到着。まだ薄明るい。当然のように外は雪で真っ白。国内線に乗り換えの際、荷物の出が遅くて慌てる。国際線から国内線に乗り継ぐにはバスで5分ほどかかる。英語が堪能なAさんが我々を先導してくれて助かった。搭乗終了寸前に飛び込む。

 ヘルシンキからロヴァニエミまでは80分程度。窓の外は地平方向が茜に染まっている。が、進行方向の空は真っ暗で、闇に向かって飛んでいくようでちょっと不気味。ロヴァニエミへは6時ころ着。真っ暗。この時の機体にもサンタのペイントがしてあって思わず写真を撮ってしまった。空港に着いてみると、一行は13人になっていて不思議。ま、いっか。K氏老夫婦、Y氏親子、A氏・Y女史の両人、女性2人組が2組、そしておいらたち。後でわかったことだが、関空で一緒になった8人はJTBを通してツアー申し込みをした人たちで、ここで一緒になった5人は、他の旅行会社を通じて申込をした人たちのようでだった。どうやら、現地でツアーを取り仕切るフィンツアーという会社が、元々の主催者で、この会社がいろんな代理店を通してメンバーを募集しているようだ。空港から町まではほんの10分程度。道が広くて大きな町に見えたが、人口は3万5千ほどの小さな町。しかも、ここはラップ県の県都で同県の政治経済の中心だとか。ガイドさん(ロヴァニエミ在住の日本人)の話によると、ラップ県の人口は約20万人、トナカイは30万頭との由。

 宿泊したホテルはポホヤンホビホテル。部屋がちょっとぼろ。2人ともソファーベッド。風呂なしシャワーのみ。ホテルにはサウナがある。このサウナ、サウナルームの隅にある熱い石に水をかけて、そこから発する水蒸気で熱する。フィンランド風サウナっていうんでしょうか。食事もこまった。まあ、量の多いこと多いこと。アポなしの飛び込みでも食事させて貰えましたが、アラカルトしかないようで、メニューがちゃんと読めないから出てくるまで何が来るかわからない状態で、結構スリルがある。(笑)8時頃から、ディナーのフランス人のツアー客でごった返すが、それまではがら空きの状態。翌日、ここで夕食をとったY氏親子は、盛装した地元の人たちの大晦日パーティーに出っくわして面食らったそうだ。建物の入り口はたいてい二重のドアになっていて、寒気が直接建物に入ってこないようになっている。物の中は、廊下も含めて20度ほどに暖められていて快適。



12月31日  *サンタクロース村とロヴァニエミ

 朝は寒いが、積雪はそれほどではない。明るくなるのは10時頃、3時には薄暗くなる。午前中はサンタクロース村に行き、午後から博物館に行ってみた。
 サンタ村は北極圏に入ったところにある。ロヴァニエミからバスで15分くらいの所にあり、サンタクロースもいる。(って地元のおじいさんが扮しているんだけど、このじいさんってばいかにもサンタさんって感じの風貌なのである。)サンタさんの所で記念写真撮影。この撮影、デジタルスティルカメラを使いMacintoshで処理して(ソフトはPhotoshopか?)カラーレーザープリン タで出力。日本円で約1,000円ほど。高いのか安いのか?サンタさんは我々がイメージするサンタクロースそのもの。ストロボをたかなければ写真撮影してもいい、ということだったが、部屋の中はかなり薄暗かったので、高感度のフィルムでないと露出不足でしょう。外は寒い寒い。この時氷点下17度ほど。土産物屋にサーメ風の素朴なみやげがあったのに、買わなかった(これは、後で後悔した。)北極圏に入ったことを証明する証明書を発行してもらった。(写真)

 午後から博物館に行くが道に迷う。いや、マジで途方に暮れた。この時が、今回の行動中でもっとも寒く、氷点下25度あった。身の危険を感じる寒さであった。博物館は北極圏に関する民俗や生活から自然まで多岐にわたっておもしろい。日本語の説明があればもっとよかった。博物館を出た4時頃にはほとんど真っ暗。

 ロヴァニエミのメインストリートにあるスーパーマーケットに行く。品揃えは豊富。特に肉。野菜はちょっと少な目。しかし、目当てのヌードル類は皆無。4時には閉店してしまう。外は寒い。8時頃になると、地元の人たちだろうか、入れ替わり立ち替わり川辺に来ては花火を打ち上げては歓声を上げていた。彼らはこんな形で新年を祝うのだろうか。



1月1日 *サーリセルカへ、そしてオーロラ観測。

 元旦だが、とりたてて感慨なし。朝食後ホテル裏の川辺に行く。8時ちょい過ぎ頃。まだ真っ暗。川はほとんど結氷していた。気温は氷点下10数度。サーリセルカへバスで移動。凍てついた道を時速80kmを越えるスピード(推定)で疾走。フィンランドではスパイクタイヤOK。真っ暗い中に時折村が現れてさびしい。例によって10時頃明るくなる。2度ほどトナカイに行く手を遮られる。途中1時間50分ほど走ったところで休憩。ロバニエミから約300kmもあろうかという道のりを3時間少々で行き着いてしまう。針葉樹の林が果てしなく続く。ゆるい起伏を見せ始めるとサーリセルカは近い。12時半ころにサーリセルカ到着。フィンツアーの係員に簡単に街を案内してもらい、オプショナルツアーの申し込みをしてフリーとなる。この時このツアーを現地で仕切るのはフィンツアーという会社であると知る。村は人口300人。ホテルが数軒。クアハウス、レストラン、ピザレストラン、スーパー、スポーツ店、郵便局、みやげ物屋、パン屋などがある。われらの宿は、コテージ風のホテル。リエコンキエッピ(雷鳥の巣)という名。一行の一部はリエコンリンナ(雷鳥の城)というちょっとグレード高めのホテルに宿泊。この差はなに?キエッピはバンガロー風のホテルでレセプションやレストランのある管理棟と部屋のある宿泊棟が別棟となっていて、何をするにも一度外に出なくてはならない。もっとも、直接外に行かれる利点がないわけではないが。

 さて、今回のツアーの目玉のオーロラ観測、なんだが、オーロラは観測初日にしていきなり見てしまった。われわれがサーリセリカに到着するのと入れ替わりにヘルシンキに向かった日本人の一行は、結局見られなかったと聞いた。かなりラッキーだった。
 村はずれにリエコンホテル系列のホテル滞在者が自由に使える小屋があって、観測はそこに出たり入ったりして行った。外気温は氷点下7度くらい。15人も入ればいっぱいになってしまいそうな小屋で中の気温も氷点下だが、外よりはずっといい。ところが、この気温はこの時期としては異常なほどに暖かいという話しだった。知り合いで、たまたまわれわれより一週間ほど前にここに来ていた人がいて、彼らの話しでは、氷点下30数度あった、ということだった。オーロラは、8時ころから見えはじめ、10時ころ絶好調。見え始めた頃のオーロラは、「えっ、これそおなの?霧か雲みたいだね。」って感じだった。一度ホテルに帰って出直そうとホテルに向かい始めた10時半頃、突然、半天がオーロラで埋め尽くされた。カーテンが揺らぐような、クラゲのひだのような帯が何列も何列も空を踊った。。色は白か緑。時折赤い色が混じる。一緒に見ていた人たちからは思わず歓声と感嘆の声が上がっていた。ホテルに戻ったメンバーを呼びに戻った人たちもいたりして、興奮した雰囲気となった。時間にして2〜3分ほどか?この世のものとは思えない神秘的なものだった。



1月2日 *サーリセルカで犬ぞりツアー

 午前中にアルペンスキー場へ。歩いて行く。前夜、オーロラを見た後に雪が降ったらしく歩いた後がくっきりとつく。誰も歩いていない。9時頃歩き始め、まだ周囲は真っ暗。スキー場に近づいても営業している気配がない。まだ暗いのに照明がついていない。今日は営業するのか?不安になり始めた頃、コースの照明灯に火が入った。よかったよかった。レンタル品は結構しっかりしている。おいらの借りたブーツはノルディカ。板はブリザード。クロスカントリースキーのレンタルも、スノボのレンタルもある。コースは斜度もまあまあ。レンタル代もリフト券も高くもなく安くもなく。雪質も良く、なにより人が少なくて最高。ただ、Tバーリフトに苦戦。センターハウスに一番近いゲレンデだけで滑る。12時ころ、上がってホテルに帰ろうとするとK夫妻が板をはいて滑りに出ようとするところだった。歩いてきて、歩いて帰ると言 うとえらく驚かれたが、わたしにすれば、70歳を過ぎて板履こうというガッツに脱帽なんですが。。。

 午後からは犬ぞツアー。これが一番おもしろかった。スキーウェアの上に防寒スーツを着て、いざっ。そりはシベリアンハスキーやアラスカンハスキーの引く7頭立ての本格的なもの。犬たちは非常によく訓練されていて、ホントに健気にそりを引きます。言うことをよく聞きおとなしくてかわいい奴等でした。そりの乗り方や犬の扱い方の簡単なレクチャーを聞いた後、乗り込みます。我々は運転手、荷物役の2人一組。運転は楽しいが荷物役は退屈な上にひどく寒い。防寒靴をはき、トナカイの毛皮をかぶった足先がつめたかった。途中、休憩は2回。1回目は風のない場所で休憩。ここで初めて犬に触って良いという許可と写真撮影の許可がおり、犬と一緒にパチリ。このあとしばらくの間は木々のまばらな雪原を走ります。いやぁ、ラップランドだなーって感じでなんかうれしくなってしまいます。2度目はサーメ風のテントで大休止。犬を休め、寒さで凍えそうな我々も暖まる。お茶とパンをくれておいしかった。犬使いの人たちが作ってくれた。彼らはホントによく働きます。犬たちも彼らの言うことは絶対らしく、多少おびえているきらいもありました。彼らは、犬をぼんぼん蹴とばして厳しくしつけるそうですが、かわいがるときは思いっきりかわいがるんだそうです。外気温、氷点下20度ほど。これでも、犬にとっては走れば暑いくらいだとのこと。そこからは樹林の中のルートを進みます。一回、操縦ミスでそりがコースアウト。ちょっとビビッた。犬たちは、急な上り坂なんかでそりのスピードが落ちると運転手を振り返ることがある。これはどうゆう意味かというと、『何してんだよ。お前も降りて押せよ!』ってことだとの由。ブレーキを掛けると、犬たちは一斉に後ろを振り返るが、ブレーキをかけたとわかると大人しく座ってしまう。われらのそりの犬たちはよく走ってくれました。なごりを惜しむようにミニツアーは終わる。

 夕食はリエッコ(雷鳥)料理。特別天然記念物の指定を受けている日本ではちょっと食べられない鳥ですが、こちらではそんなことはないみたい。ちょっと癖のある匂い。歯ごたえはかなりいいかな。正直言ってあんまりおいしいものではないな。

 食後、オーロラ観測に出かける。気温は氷点下10度ほど。10時半頃に再び見られた。昨日の夜の方がきれいだったかな。



1月3日 *サーリセルカでアルペンスキー

 今日もサーリセルカ滞在。午前中はスキー。この日はバスで行く。スキー場行きのバスは日に2本しかない。クアハウスの前を9:45と13:10。相変わらずTバーリフトに苦戦。この日はいろんなコースを滑ってみた。ゲレンデ頂上部に行ってみると、レストランがあって、なんとクルマが停まっている。どうやら反対側から登って来る道があるらしい。別コースを降りてみたらこれがなかなかいい。なんだかうまくなったような錯覚をおぼえてしまう。前日と違い板を長めにしたためもあったかな。薄明か薄暮の中を滑っている感じで幻想的な雰囲気でなかなか味わいがある。日本のスキー場の喧噪とは無縁の世界で滑りだけに集中できる。滑り始めるとここがフィンランドであることなど忘れて夢中ですべってしまう。(年甲斐もなく。)こんなにのんびりとしたスキーをもうすることはないだろう。途中、お茶しようと唯一のレストランに行くと、Yさんがお茶していた。程なくA氏が現れる。その後一滑りの後、ゲレンデを後にした。夕方のゲレンデを滑る雰囲気だが、実は正午。帰りもバスに乗る。スキー場は5時まで営業しているので、まだまだ滑れるが、帰りに真っ暗な中を歩いてこなくてはいけないことと、そんなに滑っては足腰が立たなくなってしまいそう(笑)なので、半日でやめた。3時過ぎからは全くのナイター状態となる。

 午後からは買い物したりぶらぶらしたり。のんびりと過ごした。外国に行くとついセカセカと動き回ってしまうから、こんな感じのツアーもいいかな。日本人はわれわれ一行しかいないし。。。夕食は町一番のレストランで取ることにする。玄関を入ってもだれも来てくれないので、勝手にコートをハンガーに掛けてウェイティングバーで待たせてもらう。この国は治安がいいのかお店の入口にむき出しのハンガーがあって客はほんとに無造作にコートを掛けて中に入っていく。取られると言う心配はしないんだろうか。食事はアラカルトメニューから選択した。Yさんお勧めのサーモンだ。なかなかおいしかったんだが、スープにメインディッシュにデザートだけで2時間もかかるんじゃあ困っちゃう。ちょっと風邪気味。



1月4日 *イヴァロから空路ヘルシンキへ。

 ラップランドともさよならです。この日は朝から雪。チェックアウトを済ませてバス停へ。ちょっと遅れてバスが到着。荒涼とした冬の大地を30分ほど走るとイヴァロ空港。去年の夏に行った根釧台地が雪景色になるとこんな風になるのかなと思いながらバスに揺られる。原野の道を左に折れしばらく行くとイヴァロ空港が見えてくる。田舎の駅(鉄道の)のような雰囲気なんだが、これが空港。空港に着いたとき、30人乗りくらいのレシプロ機が駐機していて、これに乗るのか?とちょっとビビル。そのうち、どこからともなくふっと1機着陸して客を降ろし、これがヘルシンキ行きとなり乗り込む。現地ガイドさんがこの国では飛行機はバス感覚と言った意味を実感する。席は当然のように自由席。空路90分ほどでヘルシンキ。

 空港からバスで市内へ。気温氷点下7度ほどでヘルシンキは多少暖かかった。30分ほど走ると中心街に到着。ヘルシンキ中央駅は広かったが近代的な印象はない。今宵のお宿のホテルヴァークナはこの駅と通りを挟んだ反対側、ソコスデパートビルの5階より最上階まで。このデパート、イトーヨーカドーといった雰囲気。ちなみにこの街の老舗のデパートはストックマンデパートで、こちらの方が少しあか抜けていたかな。部屋は今回の旅行中一番。広い室内に大きなベッド、ちゃんとバスタブのあるバスルーム。キーもちゃんとしたカード式でした。ただ、工事中というのがちょっといただけないところでした。

 最後の晩の夕食は その土地での日本料理というのがわが家の海外旅行の作法?だ。そこで、海隣丸というお店で日本料理を食べた。ガイドブックを頼りにお店を探したんだが、行けども行けども見つからなくて諦めかけた頃にやっと発見。30分くらいさまよったかな。お店にはいると日本語でいらっしゃいませ。何か新鮮。メニューがフレンチレストランみたいで驚いた。料金が日本で食べるフランス料理並に高いことをのぞけばまあまあよかったかな。お客さんのほとんどはフィンランドの方のようだった。帰りは道を変えて見たが迷うことなくホテルに着いた。ちょっと寒かったかな。



1月5日 *ヘルシンキ半日観光、そして関空へ

 朝、ホテルでぼんやりCNNを見ていたら、村山総理退陣というニュースにびっくり。いっぺんに目がさめる。
 午前中は買い物。ソコスデパートで英スオミ語辞典を買った。その後、繁華街を歩いて写真をぱち。中央駅前の郵便局で換金しようとしたんだが、窓口のお姉さんの説明がどうしても理解できなくくてリタイア。仕方ないから銀行に行こうってことになってメリタ銀行へ。暫くお客さんの流れを見ていてやっとシステムが理解できた。お店にはいるとまず、入口近くにあるQカードとかいうレシートみたいなシートを発券してもらう。(自動発券機で)それにはナンバーが書いてある。待合い室で待っているとカウンター横の表示板に何番の方は何番の窓口に行って下さいという指示が出る。われわれはこれに従って窓口に進む。たぶん、郵便局でこのシステムを説明してくれたのではないかと思うんだが、私の拙い英語力では理解の限界を越えてしまっていた。でも、このシステムって合理的だな。フォーク型の順番待ちが定着していないとできないシステムではあるが。外国人と思しき人たちが窓口付近を右往左往したあげくに係員に説明を受けていたから、わからなかったのは私たちばかりではなかったようだ。

 午後から空港へ。K夫妻と同道となる。チェックインの後食事をして時間をつぶす。出国手続きをして免税店へ。免税店が思ったより充実していなくて残念。時間をつぶすのが大変かと思ったんだが、なかなか適当なみやげがなく迷ううちに搭乗時間が迫ってきた。復路も往路と同じくフィンエアー。一路、関西空港へ。この機体にもサンタのペイントがしてあった。日本人の乗務員は若くてきれい。(^^)往路もそうだった。20分ほど遅れてヴァンター空港を離陸。。



1月6日 *帰国

 予定より10分ほど遅れて、9時45分頃関空着。入国審査の後、同行者一行と別れを惜しんで帰途につく。荷物の配送を手配し、新大阪からの新幹線を指定席に変更してもらい、はるか号に乗り込む。機中で一睡もしていないのでひたすら眠い。新幹線では爆睡状態であった。寒い地方を旅行していたためか、やたら暖かく感じる。まるで春のよう。戸外もコートを脱いで歩く。ただ、後で気がついたことだが、この日に日本は3月並の暖かさだったとのことで、コートはいらなくて当然の状況であった。自宅には15時ちょい過ぎに到着。おおむね5時間の所要時間は成田に行くのと大差はない。きれいな分だけ関空の方がいいかな。

 で、まとめの一言。冬のフィンランドは、なかなか楽しめるぞ。日が短いけど。